ウーマン・村本大輔「沖縄県知事選をなぜ、やらないと田原総一朗氏に噛みついた理由」難治ガン記者と対談【中編】
AERA dot.で朝日新聞政治部の記者、野上祐さん(46)が連載する『書かずに死ねるか――「難治がん」と闘う記者』というコラムがお笑い芸人・ウーマンラッシュアワーの村本大輔さん(37)の目に留まった。村本さんに誘われ、番組や舞台に出演した野上さん。お笑い界の異端児と難治がん記者――。意気投合した2人が語り合った沖縄問題の真の論議とは?
【村本大輔さんと対談した、難治がんの記者・野上祐さん】
※前編よりつづく
* * *
――村本さんは「朝まで生テレビ!」にも出演されました。でも、田原総一朗さんのことをツイッターで色々、書かれていましたね。
村本:僕、最初は沖縄に行ったこともないし、興味もなかった。でもニュースでよく耳にするから、調べていくと「何だこれは」と思うことが多かった。そんな時に朝生のオファーがきた。「沖縄のことを先生方に聞いてみたいから、それがオッケーならいいですよ」と返すと、「村本さん、何でも聞いてください!」と言うから出ることを決めました。
急いで沖縄出身の芸人を集めて、おじいちゃんおばあちゃんからどんな話を聞いたことがあるか、教えてもらったら、皆色んな意見を持っていた。田原さんが「何でも聞いて」と言ったから、沖縄の話をしたいと伝えた。でも、「長くなるから別の機会にしよう。今日は違うテーマがあるから」と言われて、「約束ですよ! 約束ですからね!」というやり取りもあったんです。いざ番組が始まったかと思えば、ずっとバブルの話をしている。「それなら今の沖縄をやれよ」と腹が立ってきた。
僕、弟が自衛隊にいるんです。「憲法9条改正」の話になった時、僕は議論を重武装より非武装から引き上げたいと言った。銃を持たせたくないから。でも、専門家の先生たちは極論に持って行って、話をすり替える。挙句、「じゃあ、君の好きな沖縄が襲われたらどうするの?」とか言ってくる。あれだけ沖縄のことは喋らないと言っていたのに、なぜここで急に持ってくるんだ? とイラっとした。朝生に出た後、もうすごく炎上しましたよ。そこからさらに興味が出てきて、田原さんに「もっと知りたいから、沖縄をテーマにしましょう」と言ったし、「やろう、やろう」と返してくれた。なのに、慰霊の日もスルーする。で、翁長さんが亡くなって県知事選が近づいたのに、朝生ではAIのことをやってるんですよ。それを見てめっちゃムカついた。野上さんは沖縄の話、どうですか。
野上:民主党政権になる前も後も行っています。沖縄のことって永田町ではずっと大事な話で、どの政治家を担当してもくっついてくる。東京ではないけど、東京の一部みたいな場所です。だからといって、東京では日常生活で意識している人はほとんどいない。
村本:AbemaTVのニュース番組「AbemaPrime」で辺野古移設の議論をした時(対談前日に放送)、作家の竹田恒泰さんが「オール沖縄と言っているが翁長さんが選挙で勝った時も25万票対35万票くらいだった。オールではない」と言う。なぜ、翁長さんの信念の先に思いを馳せないのかと不思議なんです。
野上:沖縄の負担の話では、森本(敏)元防衛相が一番、語っていたんじゃないですか。意外でした。
村本:番組が終わった後、僕のところに来て「その視点は鋭すぎる。今日も学びをありがとう」と言ってくれて、握手をしました。元防衛相の森本さんは言いにくいはずなのに。年を取ると縛られなくなって、人と仕事がいい具合に交じってくる。
野上:森本さんが防衛相をしていた頃、現場で見ていたけれど、村本さんと話す中でつい本音が出てしまったんじゃないかな、なんて気がしました。
村本:「朝まで生テレビ!」に出た時、森本さんだけが「自分の思ったことを一生懸命言う姿勢を持った若者が大事」と言ってくれた。好きになれば、「もっと知りたい」「もっと聞きたい」となる。今、僕たちには選択する情報も少ないわけです。こっちに宿題を与えて、褒めて大人にしようとしてくれる人は最高ですね。
野上:西部邁さんもそういう大人だったんでしょうね。
村本:西部さんのことは「選挙に行ったことがない面白い人がいる」と堀潤さんから聞いていました。ツイッターにずっと「会いたい」と書いていたら、AERAが声を掛けてくれた。でも、最初西部さんは僕と会うのを嫌がっていたんです。でも、1時間だけって決めて、対談が実現しました。「青年、飲もうじゃないか」と言ってくれて、西部さんの自宅で酒を飲んで喋っていると止まらなくなった。僕は気になったことを聞くわけです。すると、西部さんもぐっと身を乗り出して、「君は芸人にしておくのはもったいない。東大のその辺の教授より素晴らしい」と言ってくれる。3時間くらいお酒を飲みながら、二人の楽しいセッションが続きました。
野上:AERAの対談、読みましたよ。写真もすごかった。じゃれ合っているみたいでした。
村本:もう、たまらなかった。椅子に座る時間も惜しいくらい。対談が終わって、西部さんは「また喋ろう、青年」と言ってくれた。考え方は絶対違うはずなのに、楽しいセッションをしてくれる。後日、西部さんの本が5冊くらい届きました。西部さんが自殺したというニュースを見る前のことでした。
西部さんが亡くなった後、宮台真司さんと知り合った。西部さんって「朝生」で宮台さんとやりあって途中で帰ったという話がありますよね。「あれ、本当ですか?」と聞いたら、「実はあの話には続きがあってね」と裏話を教えてくれた。あの日、宮台さんが楽屋に戻ると西部さんが酒を飲みながら待っていて、『宮台くん、これからは君の時代だよ』と言って帰っていったと。いい話を聞いたなと思いました。
野上:村本さんには、呼び寄せる何かがあるんでしょうね。正面からズバっと疑問に思っていることを聞くから、周りも真剣に答えなければいけないと思う。西部さんもそうだったんでしょうね。
――お二人が意気投合されたのもどこか共通点、通じることがあったんでしょうか。野上さんご自身は刺激を受けられたんじゃないですか。
野上:そうですね。たいへん刺激もあるし、会うと「俺も何かやらなきゃな」って思わされますよね、本当に。うん。村本さんがどういう風に感じられているかは知らないけれど、僕のほうは。もらっている感じです。
村本:野上さんね、年上ですけど、キュートというか。なんというか、教室の後ろの方に座っているカッコつけの転校生みたいな。
野上:見た目がイケてない(ちびまる子ちゃんに出てくる)花輪くんみたいな?
村本:そんな感じします。それが面白い。あと、楽しんでいる感じもするし、いろんなことを認めていない感じもするかな。
野上:本当に僕はひねくれているんでね、「人間なんて本当に愚かだよね」って自分のことも含めて思っているし、「ふざけるな」「くだらねえな」という気持ちのほうが世の中を愛しているという気持ちよりも強いかもしれません。「世の中の人はこんなにも素晴らしいか」って病気になって思ったけれど、それは病気になって後天的に身に付けたもので、元々の自分はくだらねえなって悪態ついているのが「THE 野上」です。
(構成/AERA dot.編集部・森下香枝、福井しほ) (出所:AERA.dot、2018年9月29日掲載)
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